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沖縄バラ日記

今日のバラ「王朝」

一輪のバラが語るもの

2012/04/17

『王朝(おうちょう)』 鈴木 省三/日本 1983年作出
『王朝(おうちょう)』 鈴木 省三/日本 1983年作出


ミスター・ローズといわれた、故鈴木省三氏の作出されたバラです。
他に類を見ない、たおやかな色味が日本人ならではの繊細さを感じさせます。
「王朝」の名は、平安時代の王朝文化をしのばせるこの色味から取られたそうです。

去年新苗を買って、ぽつぽつ咲いてくれましたが、この春の一番花でびっくりしたのが、花もちのよさ。時期やその時のバラの体調にもよるようですが、4日目でもこの美しさ。そして、それぞれ、どの日もきれいです。
1日目。
1日目。
4日目。開ききって、色は薄くなりましたが、まだこの気品と美しさ。
4日目。開ききって、色は薄くなりましたが、まだこの気品と美しさ。
そして、本当に色がやさしいのです。
鈴木省三氏は「バラは色や形や香りが優れているだけではだめ。詩情や品格を持っていないと一級品じゃないね」とおっしゃていたそうなんですが、なるほど、王朝をみていると、詩情、品格というものがわかるような気がいたします。
あでやかなのに、しっとりと落ち着いた色合いの繊細さは、ちょっと他のバラにはありません。
あでやかなのに、しっとりと落ち着いた色合いの繊細さは、ちょっと他のバラにはありません。
バラを育てるようになってから、Webでいろいろ調べるうちに、よく鈴木省三氏のお名前を拝見するようになりました。残念ながら2000年にお亡くなりですが、本から知るその来歴とお人柄にすっかり夢中になってしましました。

鈴木省三氏がお亡くなりになった後、ミスター・ローズを偲んで「Mr.Rose 鈴木省三 僕のバラが咲いている」という本が出版され、そこには氏と親交の深かった方々がいろんなエピソードを寄せられているのですが、
第二次世界大戦中「こんな大変な時局に敵国の花を作るとは何事だ!」と非難されても、突っぱねてバラ作りを続けていたとか、
腰にまるで西部劇のガンマンのように剪定ばさみをさしたダンディだったとか、夏は頭を丸刈りにし、大きな体でノッシノッシと歩いていたので「ボウズ、ボウズ」と呼んで怖がれていたとか、
反論したら生意気言うなと胸倉をつかまれ、知面にたたきつけられたとか、
バラにはとても優しいのですが、人には厳しい、野武士のような方だったそうです。

しかし、「ばらに贈る本」という、鈴木省三氏がお書きになった、初心者向けにバラの育て方をわかりやすく説明している本を読むと、
「苗がゴクリ、ゴクリと飲めるように、水をたっぷりやりましょう」「新苗は赤ちゃんのようなもの、いつも気をつけてあげましょう」「朝、そのバラの国の言葉で、おはようのあいさつをしてあげましょう」」など、他の教本とは違い、バラをまるで人間のようにあつかい、優しさのあふれる文で綴られています。本当に、人にではなく、「ばら」に贈られた本なのです。

また、発行年が記載されている、本文ではない巻末ページに、こういう文章がかかれています。

『かよわき私の一生を つよいいきがいとして支えてくれた 薔薇に この本を贈りたいと思います。』 すずき せいぞう

こんな巻末に大事な文章を載せる奥ゆかしさも、また武勇伝に事欠かない氏が、ご自分を「かよわき」と形容されていることも、意外でした。

でも、たおやかで優しい色合いの「王朝」を見ると、それも腑に落ちるような気がします。

氏の作出されたバラは、今も多くの人に愛され続けています。
そしてこんな風に美しく咲いてくれると、お亡くなりになっていても、そのバラを通して、お人柄の片鱗をうかがい知れるような気になり、深い感動を覚えます。
バラそのものが美しく、香りがよく、素敵なものですが、この心の感動こそが、もしかしたら私にとっての、バラの一番の魅力なのかもしれません。